「18(ジュウハチ)」さん

大阪府→すさみ町

大阪府出身。釣りが好きで紀南によく来ていたところ、友人から船を買わないかと誘われて、2016年にすさみ町へ移住してきました。漁師として、すさみ町の特産・カツオなどを獲って自然と共に暮らしています。

漁師になるまで

移住前は大阪市で自動車整備をしていました。20年ほど紀南へ通ううちに出来た友人の知り合いが漁師を辞めて隠居することになり、「船いらんか」と声を掛けられたそう。船は台風が来るたびに係留する必要があるなど、大阪に住んだままでは管理が大変なので、「移住して儲からなくても、好きな釣りを続けながら生活できたら」という気持ちで「18(ジュウハチ)」さんはすさみ町への移住を決めました。

買った船の名前は「第18大洋丸」。漁師の間では船の名前で呼び合うことが多く、「18(ジュウハチ)」さんも先輩漁師から「ジュウハチ」「ジュウハチ大洋」などと呼ばれているそうです。ジュウハチさんはもともと、釣り好きが高じて船舶免許や無線関係の資格も持っていました。漁業組合員になるためには、漁師として経験や実績を積む必要があり、移住してすぐには大変難しいことです。しかしジュウハチさんは、知り合いの漁師と一緒に年に2か月ほど、静岡県などの県外へ漁に出掛けるなどして修行。その実績を踏まえ、正組合員として漁師になりました。

カツオ漁と漁師の厳しさ

すさみ町の地域ブランドとして有名な「すさみケンケン鰹」。カツオの漁期は年末~翌年の4・5月ごろで、疑似餌を付けた複数の糸を竿につけて、船を走らせながら釣り糸をひく漁法「ひき縄釣り漁業(ケンケン漁)」で獲ります。近年は黒潮の大蛇行などが原因で水揚げ量が少なくなってきているようです。

「1日で20~30万円など、普通のサラリーマンだったら考えられないような収入を得ることもあるようですが、先輩漁師さんの話によると、1年の内、漁期や天候の影響で漁に出られるのは3分の1程度。その収入から、生活費だけでなく油代や船のメンテナンス費用等の支出を確保しないといけないと聞いています」とジュウハチさん。ブリやカンパチ、タイなど他の魚も獲るのですが、年々カツオの数が減ってきているという話を聞いているので不安なこともあります。

農林水産就業補助金を活用

和歌山県の移住・定住制度には「移住者農林水産就業補助金」があります。漁業については組合員資格の保有や、独立経営などが条件になりますが、設備などの購入経費に対して最大50万円を補助してくれるというもの。ジュウハチさんは2018年夏に申請し、「カラー液晶レーダー」を購入しました。漁業就業者での活用例はジュウハチさんが初めてです。

暮らしと今後に向けて

漁師としての暮らしについてジュウハチさんは、方言や漁師なまりに困っていると苦笑します。「船に乗っている間、無線機で釣果報告を行うために必須だけど聞き取るのは難しい。先輩漁師さんの話では、ちゃんと聞き取れるようになるまで5年はかかったと聞いたので、方言がわからない私は10年くらいかかるかもね」

すさみ町に移住してきたころは一軒家を借りていましたが、2017年に別の空き家を購入しました。地域の清掃活動に参加したり、祭りに協力したりして、すさみ町の日々を楽しんでいるようです。

「ほんの3年やそこらで他の漁師さんと同じようになる訳ではないので、スキルを磨いて、魚が来たときにきっちり獲れるような漁をできるように頑張っていきたい。自然が相手なので難しいけど、それに馴染んでやっていけるようにしたい」と今後の決意を語ってくれました。

ジュウハチさんは話すと楽しくて、笑いの絶えない取材になりました。漁師の道は今始まったばかり。一次産業の担い手不足と言われて久しいですが、美味しい海の産物を食卓に届けてくれようと頑張るジュウハチさんを応援していきたいと思います。