村垣 縁(むらがき ゆかり)さん

大阪府→紀の川市

和歌山県紀の川市出身。大阪で就職し4年間勤務した後に、実家の桃農園をサポートするためにUターンした。現在はこめ油の製造販売で有名な築野食品工業で働いている。同社のこめ油を使ったパン作りなんかも最近では趣味の一つだそうだ。大学進学や就職などを経て戻ってきた、村垣さんの第二の和歌山暮らしとは。

第二の和歌山ライフスタート

「中学・高校生くらいの時は、全く実家の家業には興味がなかった。」「ありふれすぎていて、その価値にも気づいていなかった。」「親の仕事にも全く魅力を感じていなかった。」些か辛辣な印象もうけるが、多くの田舎で暮らす中高生に当てはまるだろう。村垣さんもそういう感想をもっていたうちの一人だ。しかし、一度都会へ出たきり、帰ってこない人も多い中、村垣さんは和歌山へ帰ってきた。いわゆるUターンだ。

村垣さんのご実家は桃農園を経営している。大学では情報系の学問を修め、就職先でも情報システム関連の部署で働き、インターネット販売にも携わっていた経験を活かし、実家の桃をインターネットで販売するという新たな取り組みに挑戦するために帰郷を決めた。

実家の桃農園。春には綺麗な桃の花が咲く。

「全く興味がなかった。」と思っていた実家の桃農園だが、大阪で就職したのちも夏になると実家から届く桃の味に、自身も懐かしさを感じることができ、会社の同僚や上司にも気に入ってもらえた。ありふれすぎていて気づかなかった価値に、外に出ることで気づくことができたのだ。

Uターン後、5年ほどネット販売サイトの立ち上げや運営に勤しんだが、現在では運営も両親が担当するようになっている。実際に経験してみて感じる難しさもあったという。必ずしも家業一択ではなかった村垣さんにとっては、和歌山で改めて就職するという選択肢もあった。

現在の勤め先は築野食品工業株式会社。和歌山県かつらぎ町に本社を構える、こめ油の製造販売などを主に取り扱っている言わずも知れた企業だ。総務課に所属し、主に勤怠管理を担当している。実は築野食品工業は村垣さんにとって和歌山での2社目の就職先だ。はじめに勤めた会社での恩人達との出会いや経験が総務の仕事に進みたいと思えるきっかけだったので、とても感謝している。「和歌山ライフがすっかり気に入っていて、和歌山から出たくなかった。」と話す村垣さんの帰郷後の和歌山ライフとは・・・。

自分の知らない和歌山を見つける喜びがある

「高校生くらいの時までって、車も乗れないし、活動エリアも狭いので、そんなに自分の興味のあるものにも出会えなかった。10年前くらいから、いろんなところから移住された方が新しくお店を始めたりとか、イベントを開催したり、勉強会をしたりしていて、いろんなおもしろい活動をされている方々に会う機会が増えて、新しい和歌山がどんどん発見できました。」

大学進学をきっかけに大阪へ出た村垣さんにとっては、高校生までの和歌山の印象が全てであったが、進学や就職、違う土地での生活を経て帰ってきた和歌山は、自分の知っている和歌山とは全く違って見えたと話す。新たな発見を求めて地域の魅力を探して回ることが、今の楽しみの一つだ。

きっかけとなったのは和歌山情報発信ラボという和歌山県が企画する地域の魅力を発見し、発信するイベントに参加したこと。

村垣さんが和歌山情報発信ラボで、加太を訪れた際に発見した「めでたい電車」。「加太名物の鯛がテーマになっていて、内装もカラフルでかわいかったです。」

「和歌山に帰ってきてから、少し足を伸ばした時におもしろいものに出会えるという喜びがありました。私自身、あまり積極的な方ではない分、そういうイベントに参加するのは少しハードルを感じたんですが、そういうところに来る人っておもしろい人も多くて、すごく刺激も受けました。実際、和歌山情報発信ラボで取材体験をした時、加太の町の散策をしたんですけど、加太は観光客も人口も減っている中で、町を盛り上げようとしていたり、普段自分もしながら、地域を盛り上げようとしている方々がいることを知ったんです。普段の生活ではなかなかできない体験だったんですが、地域の人の話から別の視点を与えてもらって、より和歌山が好きになりました。」

移住者が和歌山ライフの先生!?

紀の川市やかつらぎ町は、周りを山に囲まれた自然豊かなところだ。しかし、それも村垣さんにとっては見慣れた風景。そのこと自体に特段に感動することはないだろう。だが、印象的な出来事がある。村垣さんの以前の職場の同僚に大阪からの移住者がいた。山登りが趣味のその同僚は、近所の山を登山することもあったそうで、ある日、村垣さんも同行することになる。近所の山に登るなんて、高校生の時の村垣さんには想像もできなかっただろう。そこで村垣さんは、忘れられない体験をする。

現在の和歌山暮らしについて、終始楽しそうにお話をしてくれた村垣さん。Uターン後の暮らしの充実ぶりが垣間見えた。

「リスがいたんですよ!リスが!天然のリスがいたんです。まさか私、日本の山にリスがいるなんて思ってなくて!山には存在してるんだと!」

山の上でリスを発見した時の興奮が、そのままに伝わってきそうな勢いで、インタビュー中も興奮気味に話してくれた。些細な出来事かも知れない。なにせ、聞く人が聞けば、山でリスをみたというだけだ。しかし、村垣さんにとっては生まれ育った地元の山にリスが生息しているなんて思いもよらなかった出来事だった。その感動と興奮は、生活の範囲から抜け出して、地域の魅力を自分の足で見つけに行かないと味わえない。自ら進んでやらなかったようなことも、移住してきた人に連れられてやってみることで新たな発見があった。

「Uターンという意味でいうと、もう一度新しい場所だと思って帰ってくるといいと思います。地元だからなんでも知ってると思いがちだけど、自分の知っているところって実は限られている。出身地でも、新しい場所へいくような気持ちが大切だと思う。」

様々な価値観で地域に暮らす人々みんなが和歌山ライフに新たな発見を与えてくれる先生だ。そこには移住者も地元出身者も関係ないのかも知れない。住み慣れた町でも、少し足をのばせば新たな発見がある。そういった発見のくり返しが、地域生活をより豊かにしてくれるに違いない。