野村優一さん・聖子さん

沖縄県→有田川町

野村優一さんは沖縄県今帰仁村出身、妻の聖子さんは和歌山県有田川町出身です。沖縄に住んでいましたが、2011年に聖子さんが里帰り出産。パン職人として働いていた優一さんは、聖子さんの実家に近い方が子育てしやすく、パンはどこでも焼けるからと翌年移住してきました。現在はパン店「Jimamaya bakery(ジママヤベーカリー)」を経営しています。

気ままなパンライフ

優一さんは岡山県での大学時代、おいしいパンに出会って衝撃を受け、自分で作れるようになりたいと、その店で3年半ほど修行しました。将来的に自分の店を持ちたいと思いながら沖縄県に戻り、ホテル系列のベーカリーで働きました。
移住後は複数のパン店に勤め、紀美野町のパン店で働いていたころに、自分の店を持つためのイメージが湧いたそうです。日々レシピが変わっていくような自由な発想で作っているのを見て、レシピ通りに作る大量生産との違いに感銘を受けたのです。

聖子さんは大学時代に沖縄好きの友人と一緒に沖縄を訪れて好きになり、卒業後は沖縄県に移住。ホテルに就職して、優一さんの働いていたベーカリーのあるホテルに異動になって優一さんに出会い、結婚しました。
1人目を出産した後は沖縄に戻るつもりでしたが有田川町に住むことになり、2人目の出産や子育ての合間を縫って、こども園や保育園、学童保育所などで勤めました。現在はジママヤベーカリーでパンの仕上げや接客を担当しています。

沖縄風のお店に

店は聖子さんの祖父母が住んでいた空き家を一部改装し、2017年5月にオープンしました。パン作りには自由を忘れないでいようと「自由奔放」「気まま」の意味がある沖縄弁「ジママ」を店の名前に付けました。そして店の番地は偶然にも「813-1」。沖縄弁のあいさつの言葉「ハイサーイ」と読めるので、優一さんは「運命的な感じがした」といいます。

改装は、近くの飲食店からもらった赤瓦を屋根に載せたり、自分たちで琉球石灰岩を床の一部に塗ったり、聖子さんの実家の建材店にはカメの形にコンクリートを流し込んでもらったり。まちづくりイベントで出会った画家「まつお」さんには、壁にジンベエザメとシーサーを描いてもらいました。

パンも沖縄風のものがあります。バタークリームパンは沖縄のソウルフード「なかよしパン」(ココア味の生地にバタークリームが挟まったもの)をイメージ。沖縄から仕入れた黒糖で作った黒糖パンのほか、ジーマーミ豆腐やサーターアンダギーなども手作りしており、人気だそう。「沖縄の人が食べても沖縄の味と思うような、本場の味を再現したかった」と優一さん。

自然に囲まれ、子育てしやすい有田川町

有田川町のよさについて優一さんは「ちょっと車を走らせたら海もあるし、自然に囲まれていて、人も温かい」、聖子さんは「周りに助けてもらっているので、温かみを感じています。沖縄を好きになった理由に親切だからというのがあったけど、和歌山も声を上げると助けてくれる人が多くて、過ごしやすい」と話します。さらに、ベビーカーやチャイルドシートを貸し出してくれる町の制度があり「子育てがしやすいのもメリット」と聖子さんは笑顔で話します。

今後は「もっと地域の人と有田川町を盛り上げたい。徐々に横のつながりができつつあるので、いずれは地元食材を使ったイベントなどをしたいと考えている」と、優一さん。有田川町巡りをしてもらいたいと、自分たちのいいと思う店のチラシを店内に置くこともしています。
「こちらが気を遣うと、和歌山の人は逆に気を遣ってしまうので、ポンっと入ってしまう方が受け入れてくれると聞いたことがある。沖縄の人はいい意味でいい加減なので、ゆっくり人間関係をつくっていければ」

人生のさまざまな場面の“縁”に感謝する姿や、自由なパン作りを心掛ける姿勢がすてきな2人。有田川町での生活が合い、それぞれのペースで地域の人とのつながりを強めていっているのが伝わってきました。

■きままなパンライフ Jimamaya Bakery
・所在地 和歌山県有田郡有田川町天満813-1
・TEL FAX 0737-20-2052
・Mail jimamaya.bakery@gmail.com