安井 也人(やすい なりと)さん

大阪府→串本町潮岬

和歌山県和歌山市出身。紀の川沿いのまちで幼少期を過ごし、小学校2年のときに大阪へ移住。その後、大阪で就職し、40年を関西で過ごす。51歳のとき、釣り好きが高じて本州最南端のまち串本町へ移住。現在は串本町のなかでも最も南端の地区、潮岬に在住し、様々な生業を組み合わせながら、日々釣りをする生活を送っている。

釣り好きには最高の場所、潮岬

潮岬の釣り餌店「フィッシングヤスイ」を一人で切り盛りし、沖アミやアミエビなど、釣り用のえさの販売を行う安井也人さん。子どものころから釣りを続け、全国に足を運ぶほど大の釣り好きです。

そんな安井さんと潮岬の縁は、父に連れられ釣りに来ていた幼少期にまでさかのぼります。その後大阪へ引っ越してしまいましたが、釣りへの情熱を抑えきれず、会社員のときには大阪から潮岬へ週1回のペースで通い詰めました。まだ高速道路の整備が進んでいない当時、片道7時間かけて通い、月のガソリン代は17万円にものぼったとか。その後も働きながら潮岬に通い続けてきた、根っからの釣り好き、潮岬好きです。

「四国、九州、全国いろいろ回ったけど、潮岬が近畿圏では最高の漁場でした」と安井さん。魚種の豊富さ、魚のサイズ、どれをとっても潮岬は別格だといいます。

そんな安井さんの釣りは、仕事終わりの夕方から。お気に入りの磯や遠くの島へと渡り、そこで大物を狙います。地元の渡船業者の方々との関係も考え、お客さんとかぶらない時間帯に釣りをしていますが、最近では釣った魚を市場にも卸し、収入源の一つにもなっています。中でも、高級魚のクエやアブラダイ(フエダイ)は稼ぎ頭です。

お気に入りの釣り場から眺める、潮岬の夕日

釣りが身近な場所へ

大阪の大手企業で33年間勤めた後、51歳のときに思い切って退職。潮岬へ移住して10年が経ちました。移住する前から通い詰め、顔なじみができていたことが快く受け入れてもらえた理由ではないか、と安井さん。やっぱりいろんな人と話すことが大切だ、と繰り返します。そうして生まれた繋がりの中から、今の色々な仕事が生まれていると言います。

「儲けようっていう気持ちは一つもないんです。自分でお店やってるけど、渡船屋さんの邪魔にはならないように気をつけてますね。餌とかも大きいところで買いたい人はそうしてくれたらいいし、こじんまりと楽しくやってます。近所の人に魚をあげる代わりに野菜をもらったり。お互いに助け合いながらね」。

潮岬に通い詰めていた大阪時代。仕事をしながらの釣行は体力的にも厳しく、寝不足で事故をしてしまったこともありました。やっぱり現場にすぐ行けるところに住みたい、そんな思いから移住を決めたといいます。

移住前に比べて収入は下がりましたが、まったく苦にはなっていません。もともとお金よりも、自由で、心豊かな生活がしたかったという安井さん。「今は充実しています」とはっきり答えてくれました。現在は釣り餌の販売や、釣った魚の卸しに加え、地域の水道計の調査員や、シルバー人材センターでの仕事、草刈りなどいくつも仕事を組み合わせながら、好きなことができる生活を満喫しています。

ある日の釣果・高級魚のアブラダイ(フエダイ)

好きな土地を守りながら

釣り好きの安井さんが通い詰め、移住するまでに惚れ込んだ潮岬ですが、昔と今ではずいぶんと様子が変わってきました。安井さんは、少し寂しそうに、昔の潮岬について教えてくれました。

「釣りする人もだいぶ減ったよね。渡船屋さんも昔はもっとたくさんあったんだけど、今は一軒だし。みんなパソコン触って、自然の中で遊ぶってこと自体が減ってるんだろうね。

昔は餌を撒くと水面から大きな魚が見えたんだけどねぇ。今は見えなくなっちゃったね。ナガレコ(トコブシ)もほとんどないですもん。地球環境の変化が大きく影響してるんだろうね」。

釣り人が減ってずいぶんと少なくなったとはいえ、釣りに来てはゴミを残していく人もまだたくさんいます。そんな状況を見かねて、安井さんは最近釣りをする前にゴミ拾いをしています。

「自分はこの場所がやっぱり好きだから、守っていきたいっていう思いもあって。後々の人が釣りできなくなっちゃうのが嫌なんだよね」。

目標をもって移住を

最後に、これから移住する人へのメッセージを伺いました。安井さんは自由で心豊かな生活を手に入れた一方で、移住して長くそこで暮らしていくためには、目標が必要だと言います。

「移住するなら何か目標を持っていかんと。将来の目標なり、自分の定めた目標なり、それに向かって頑張るつもりでやらないと」。

安井さん自身も、40年続けてきた釣りを軸にすることで、そこから気力を得て日々の生活や色々な活動ができています。

「この間、こんなにでっかいクエ釣ったんだよ。20万で売れてね」。

取材中、クエを釣った時の映像をすごく楽しそうに見せてくれました。1時間にも渡るハードな戦いだったとのこと。少し寂しいことや、不便なこともあるようですが、それよりもずっと、自分が好きなことができるここでの生活が充実している。安井さんの笑顔がそのことを物語っていました。

フィッシングヤスイ
〒649-3502
和歌山県東牟婁郡串本町潮岬2849
090-5465-0482