小川 貴央(おがわ よしてる)さん

滋賀県→和歌山市

和歌山県湯浅町出身。サラリーマン生活を経て、和歌山市本町でカフェ経営。その後、まちづくり会社を設立後、滋賀県に移住。和歌山市にUターンした後は、イベントやリノベーションなど、まちづくりの案件に多数携わっています。

独立してカフェをオープン

カフェ経営を皮切りに、まちづくりに関する企画やイベントなど、和歌山市の“街の風景”に欠かせない人物が小川貴央さん。湯浅町出身の44歳で、現在は和歌山市本町で奥さまと2人暮らし。大阪の専門学校を卒業後、和歌山市で13年間サラリーマンとして勤めた後、『文具とカフェのお店 スイッチ』を2009年にオープンしました。

▲小川さんが和歌山市本町にオープンした『スイッチ』

「サラリーマン時代は、とにかく会社がつまらなかった。ああ、僕の未来ってこうなっていくんや、何のために生きているのかって。そこで大変なのは承知の上で、中学からやりたかった形態のお店を開こうと決心して、会社を辞めました」。

『スイッチ』には感度の高い人たちが集まり評判を生みましたが、店でイベントを仕掛けてその評判が良くても一過性に終わる事が多く“街の人”が急に増える事がない状況に憂いを感じていた。そんな時に東京のリノベーション会社の方と話す機会に恵まれ、小川さんの活動の方向性がはっきりしました。

「“リノベーションとまちづくり”と言う概念を伺った時、店舗を経営するというより、まちづくり活動を通して人を増やしてから店をやるべきだ。多様性の有る人が多く歩いているような地域を作りお店をやりたいと決断、「カフェと文具の店 スイッチ」を一度閉店し、『まちづくり会社 ㈱サスカッチ』を設立しました。それが2014年のことです」。

会社設立すぐ、まさかの滋賀県移住!?

でもサスカッチを設立した矢先に、小川さんはなんと滋賀県に移住してしまいます。滋賀県で開催される『BIWAKOビエンナーレ』というアートイベントの事務局を運営することになったのです。
「もともと、そっちが先に決まっていたんですよ(笑)。広報、ボランティアの募集からアーティストさんの制作のお手伝い、展示まで何でも。滋賀はめっちゃ文化力高いし、文化に対して市民も理解がある。すごく勉強になりましたよ」。

▲アートイベント「BIWAKOビエンナーレ」会場内

Uターン後、まちの活性化に深く携わる

▲大阪府岬町での空き家改修事業

1年後、和歌山市に戻って来た小川さんは『サスカッチ』を通じて、まちづくりに関わる案件やイベントをいろいろ仕掛けます。大阪府岬町から依頼を受けたのが、まちづくりとリノベーションの案件。空き家の改修や広場の有効活用としてイベントを開催するなど、和歌山市から通いながら3年間携わりました。

▲和歌山市加太で開催された「Kisssh-Kissssssh映画祭」

『サスカッチ』設立前から、小川さんが中心となって携わっているイベントがあります。今や和歌山の晩夏の風物詩となった「Kisssh-Kissssssh映画祭」(キシュキシュ映画祭)。和歌山市加太にある空き家などでインディペンデント映画作品の上映やトークショー、夜には野外特設スクリーンをメイン会場に、星空の下で選りすぐりの映画が鑑賞できる素敵なイベントで、7回目となる2019年は、和歌山市中心部に場所を移して開催。街をぶらぶら歩きながら、かつての城下町の雰囲気を感じつつ、映画を楽しむことができます。
そして現在は、和歌山市西ノ店に事務所を構えて『W”POT”』(ダブルポット)というプロジェクトを進行中。
「和歌山には良いものがたくさんあるのに、生産地は表に出ず製造だけを請け負っている場合が多い。だったら地元にいる僕たちが、和歌山生まれの商品を作り、自分たちで全国に広めて、販売するということをしたい。全国で広めることによって、和歌山に住んでいる人がその存在を知り、自分たちの街を誇りに思ってもらいたい。そんなことを始めようと考えています」。

▲元問屋さんだった建物に40年間眠っていた多数の食器などを販売したイベント「W”POT”蚤の市」

和歌山市への移住のメリットは?

和歌山市を拠点として、自分の感性の赴くまま、ニューヨークへ行って本場のエンターテインメントに感激したり多様に動く日々。そんな小川さんが感じる和歌山市への移住のメリットとは?

「なんでもできると思うんですよ。キャンバスが真っ白。都会にいれば企画する必要もないし、すでに誰かが手がけている。和歌山市では好きなようにイベントもできるし、お店もそう。和歌山市ではアイディアがあればなんでもできる。伸びしろというか、隙間がある。他府県から移住して、何か新しいことを始めようと考えている人にとっては、和歌山市はおすすめです。

▲和歌山市西ノ店の事務所にて

空き家が増えているのは、プラスに捉えたら、“なんでもできるやん”という良さに見えます。街なかだと家賃は安いし、ライフラインは苦労しない。遠くに行くなら車は必要だけど、自転車があれば問題ない。僕は和歌山市本町に住んでいるのですが、住みよい街だと思います」。

もっと文化力を上げて、魅力ある街に

まちづくりに関する企画やイベント開催など、精力的に活動する小川さん。なぜそこまでして、地元の活性化にこだわるのでしょう?

「お店をやりたいというのが根底にあるのですが、僕は和歌山市で老いて死ぬと思っています。そこまでの長い時間をかけてもっと面白くしたい。それを理解、協力してくれる人と一緒に、もっと文化力の高い街を作っていきたいのが、目標であり夢ですね、大きく言ったら(笑)」。

一般的に学生は高校を卒業すると、和歌山県外の企業に就職したり、大学、専門学校への進学が多いイメージがあります。若者の県外流出は課題でもあります。そういった危機感は小川さんの中で常に持っています。

「若い子たちが留まりやすいように、個性や多様性を認めてあげることができる街にできれば…。和歌山市にもっと移住してもらえるよう、住みたい街、面白い街に、自分たちが変えていければと思っています」。

株式会社サスカッチ
和歌山市中ノ店北ノ丁22 2階1号室(北ブラクリ丁会館)
http://ssqtch.jp/