鈴木貴裕さん

千葉県→古座川町

千葉県白井市出身。出産・育児をきっかけに、奥様の出生地である和歌山県への移住を考え始め、2017年3月に古座川町へ移住。鈴木さんは、「ジャイアン貴裕」というリングネームで闘う「現役格闘家」という異色の経歴の持ち主でもあります。

移住計画のはじまり

都心まで電車で1時間。車を走らせれば15分ほどで大型スーパー、大型ホームセンター、家電量販店、大抵のものが揃っている。開発が進み、新興住宅地が増え続ける。
鈴木さんが生まれ育ったのはそんな大都市のベッドタウンのような街でした。

便利ではあるけれど、慌ただしく時が過ぎ、消耗していく日々。鈴木さんはそんな生活に疑問を感じていました。
「娘が生まれて子育てしているうちに『もっと自然環境豊かなところでのびのびと子供を育てたい』と思い始めたんです。そこで妻と話し合い、妻の出身地である和歌山県南部への移住を考え始めました。このサイト『WAKAYAMA LIFE』も毎日のように見ていましたよ(笑)」
ここから、鈴木さんの移住計画がスタートしました。

移住が決まるまで

「『WAKAYAMA LIFE』を見ていたら、移住セミナーや相談会が、有楽町の東京交通会館で毎月のように開催されていることを知ったんです。そこに参加して、ゲストで来ていた先輩移住者さんのお話を聞いてから、より具体的に移住計画が動き出しましたね。」

鈴木さんは、「現地を見てみないと分からないだろう」ということで、移住フェアで紹介を受け「和歌山県ふるさと定住センター」の現地案内を受けました。

最初の希望地は田辺市中辺路町でしたが、その後案内された古座川町をとても気に入ったそうです。
「自然環境は豊かすぎるくらい豊かで、県内でもトップクラスに人口は少ないんですけど、思っていたより子供が多いんですよ。娘の同級生も10人以上います。子供が少な過ぎて寂しい思いだけは絶対にさせたくなかったので、移住先を決める上でその部分はものすごく大きかったです。」。
綺麗な川、緑に囲まれ、大きな声で挨拶をする子供たち。
移住を考え始めたきっかけでもある、「理想の子育て環境」がそこにはありました。

移住する時に鍵となるのは「仕事」と「家」。
移住希望者・移住者のサポートをする「ふるさと定住センター」の現地案内を受けて、「地域、人を知ることができるし、自分の経験が生かせる、この仕事がしたい!」と鈴木さんは強く思ったそうです。
そして先輩移住者の方が探してくれて、すぐに住むことのできる家も用意してもらえることに。
そして、移住計画を立て始めてから1年足らずで古座川町へ移住されました。

「移住の話をしたら両親には最初反対されましたね。でも、手紙を書いて気持ちを伝えたら理解してもらえました。両親には本当に感謝しています。
移住してからは、最初はバタバタとしていましたけど、みんな優しくて、良くしてくれるので助かっています。毎日楽しいです。楽しむように心掛けているって感じですね(笑)4歳の娘ものびのび育っていて、近所の人たちも温かく見守ってくれています。シャイな子なんですけど、自分から元気に挨拶をするようになりました。「はやくなつになってほしいー!かわであそびたいー!」といつも言ってます(笑)」
お子さんの写真を眺めながら笑顔で話してくださいました。

地域で経験を活かす

鈴木さんは、「ジャイアン貴裕」というリングネームで総合格闘技の舞台で活躍する格闘家でもあります。
「色んな移住者の人がいますけど、僕はかなりのイロモノですよね(笑)。でもそのお陰ですぐ名前を覚えてもらえましたよ。地元のおじさんや子供たちも「ジャイアン」と声を掛けてくれるんです(笑)。受け入れてくれているんだなと思うと嬉しいですよね。」。

鈴木さんは格闘家の経験を生かし、地区の集会所を借りて、週1回格闘技教室を開いています。
「小学生、女子高生、同世代のパパ友や67歳のおじいちゃんまで。幅広い世代の地元の方が参加してくれています。格闘技の楽しさを知ってもらい、地元の若い子たちの選択肢を増やす手伝いが出来ればいいですね。」と話す鈴木さんの目は輝いていました。

興味のあった狩猟

鈴木さんが古座川町を選んだ理由はもう一つありました。
「狩猟に興味があって、古座川町に解体処理施設があったことも移住した理由の一つですね。狩猟肉、特に鹿肉は高たんぱく・低脂肪で栄養価も高くて、格闘家の間では話題になっていたんですけど、入手することが難しくて。それを自分で捕って解体して加工まで出来たら最高だなと思っていました。」。
和歌山県では鹿・猪・猿などによる獣害が深刻で、狩猟免許取得も推奨されています。
鈴木さんも移住した翌年に、銃の所持許可、狩猟免許を取得しました。

そして、古座川町の担当職員、ジビエ施設の職員と共に「古座川ジビエ大作戦」と称し、格闘家・アスリートに向けてのジビエ肉のプロモーション事業もスタート。
自身の交友関係を活用し、大晦日に開催された格闘技イベント「RIZIN」(ライジン)への鹿肉ステーキでの出店など、ジビエ肉の利活用に積極的に取り組んでいます。

「現在勤めているふるさと定住センターを離れて、次はジビエ施設『山の光工房』の職員として、解体技術や鹿・猪に関する知識も身に付けていこうと思っています。地域特有の仕事を、自分にしかできないやり方で取り組む。毎日ワクワクしています。自分のやりたいことをして働きながら、家族との時間を大切に暮らしていく。理想の生活が出来つつあります。」。
鈴木さんは終始充実した面持ちで話してくださいました。

「いざ来てみたらどうにかなるもんですよ。迷って足踏みしていても時間は容赦なく過ぎていくだけ。自分に信念があって、地域に入っていこうという姿勢があれば地域の皆さんも快く受け入れてくれますから。和歌山県でジャイアンが待ってますよー(笑)」。

【編集後記】
移住支援という仕事からジビエ施設の職員へ。地域の課題に向き合う仕事を経験した鈴木さんからは、心にゆとりを持って暮らすこと、地域の一員になるという意識を強く感じました。