桜井保典さん

兵庫県→田辺市

兵庫県神戸市出身。運送会社の旅行部門の転勤で通算7年半を過ごした田辺市を気に入り、早期退職して2009年に移住してきました。世界遺産・熊野古道の玄関口となるJR紀伊田辺駅の近くで「てんつくゲストハウス」を営み、旅行業や地域づくり、エネルギー事業などを手掛けています。

旅行好きを生かして仕事を

前職の会社では、企画から営業、添乗に至るまで携わっていました。しかし、旅行部門を一度たたむと言われ退職。田辺市は旅行業をやる上で、近くに南紀白浜空港と関西国際空港という二つの空港や電車、高速道路などがあり交通の便がいいところ。移住後も旅行好きを生かして、白浜町の宿と手を組んで旅行業を続けています。
ゲストハウスは、空き家になっていた元・大衆食堂。食堂のオーナーは、息子さんと年齢が同じくらいで、食堂によく通っていた桜井さんだったらいいよと言って貸してくれました。部屋が余っており、田辺市には世界遺産がありインバウンド(訪日外国人客)も見込めるため、当時は田辺市で2店目となるゲストハウスを開きました。月100人ほどが宿泊し、日本人と外国人の割合は半々だそう。
ゲストハウスは2階建て。1階の道路に面した部分は曜日ごとに店が変わるシェアーショップ。現在はフェアトレードやエステ、かごクラフト、カフェなどがあります。

まちづくり活動にも力

建物の改装を通じてまちづくりをする人を育てる「リノベーションスクール」に参加して勉強をした後、2015年、和歌山市で「ワカヤマヤモリ舎」の立ち上げに取締役として関わりました。「ヤモリ」という言葉には「家を守る」という意味が込められています。同社はビル1棟でシェアオフィスやシェアルームなども展開するゲストハウス「RICO(リコ)」を経営しています。


田辺市では2016年に5人の仲間でまちづくり会社「タモリ舎」を立ち上げ、ゲストハウス「the CUE」を開きました。カフェ&バーの棟はクラウドファンディングで募った資金で改装。「リターンで宿泊券やドリンク券をお渡しすれば、絶対に来てくれる。一人ではなく友達や家族も連れてきてくれるから、後のつながりができた」と笑顔。ゲストハウスの利用者だけでなく、地元の人らにも愛される場となっています。

エネルギー事業として「南紀自然エネルギー」も運営しています。耕作放棄地を利用し、高さ約3メートルの台を設置して太陽光パネルを並べており、その下は農地として市民に貸し出しています。電力会社に売電し、収入は地元で活動するNPOに寄付するなどしています。田辺市のほか、串本町やすさみ町にも発電所を展開しています。

他にも2017年から、田辺市街地で大学生が起業を体験できる「たなべ大学」の実行委員会委員を務めるなどしています。

紀南での暮らし、可能性

紀南の良いところは都会と違って通勤時間がかからないところ。「紀南地方は気候がいいし、人間的にも余裕がある。住みやすい」「ストレスが少なくて、精神的にいい」と桜井さん。給料は少なくても、家があれば生活費もそんなにかかりませんし、豊かな暮らしができます。自分たちの食べる分くらいなら畑で作れます。

定住で一番大事なことは「仲間をつくること」。「お金を稼ぐのはいろんな方法があるけど、仲間をつくってみんなでやるというのが楽しい」と笑顔で話します。

紀伊半島は昨年、世界的に知られる旅行専門誌「ロンリープラネット」で「おすすめの旅行先」の5位に選ばれました。今後は「三重県まで連携してやっていけば面白いことができる」。「これから移住してくる人には、空き家や空き店舗を活用して、余った部屋を貸すゲストハウスやシェアハウス、カーシェアリングなどがおもしろいんじゃないかとおすすめしたい」と話していました。

人と人との関係や地域のこと、環境のこと、さまざまなことに手を広げて仕事にしている桜井さん。気さくで、どんな相談にも応じてくれそうな懐の広さを感じました。

 

■てんつくゲストハウス
・所在地 〒646-0031 和歌山県田辺市湊1-11
・TEL  0739-24-7660
・Mail Tentsuku.g@gmail.com
・Facebook @Tentsukuguesthouse