藏光俊輔さん・綾子さん

京都府→日高川町

和歌山県日高川町出身。都会からUターンし、作物のネット販売や物々交換など、農業を中心に新しいつながりをつくっている藏光さんご夫婦。日々の仕事と向き合いながらたどり着いたライフスタイルはとても興味深いものでした。

この町を出た時から、戻ってきたいと思っていました。

藏光さんご夫婦は2011年に和歌山県に移住し、これまで農家を7年つづけています。日高川町は旦那さんの故郷であり、京都の大学に通う頃からいずれは帰ることを考えていたそうです。「元々この町の環境が好きだから帰ってきたんです。自然の中で働けるのがとてもいいですね。自分に合っていると思います。」とまっすぐに思いを語ります。


藏光さんは就農してから、これまでとは違う新しい販路をつくりたいと考えていたそうで、すぐに作物のネット販売を開始しました。「作物が収穫できた時はもちろんうれしいですが、それがお客さまの手に届いて、食べた人が『おいしくてびっくりした!』とか感想をもらった時は『やった!』と思いますね。」。


現在、藏光さんがつくっているのは、温州みかん、南高梅、カーネーション、甘夏、八朔など。「毎年1割2割ずつ畑が増えて来ている感じですね。都会にいた時は収入がないと生きていけないと思っていたけど、ここにいると自分でものをつくっているので、なんとかなるかと思えてきました。就農当初は農業で収入を得られるのかが不安でしたが、最近は心配しないですね。」。

この時代に物々交換を積極的に行なっています。

藏光さんは自分のところで収穫した作物を、積極的に全国の農家の方とつながり物々交換を行なっています。「私が農家の嫁になってからブログをしているのですが、そこで全国の農家の奥さんとつながりができて、お互いに作物ができたら送り合うことからはじまりました。」と奥様の綾子さん。今では、秋田県のりんご、北海道のじゃがいも、九州や長野県の野菜などと、2人合わせて年間50件以上、積極的に物々交換を行なっています。

年間を通してみかんや梅、花など様々な農産物を生産。農家の嫁ブログにて随時更新!

旦那さんも「生産者の方だけじゃなく、いろんな作り手の方ともつながっていて、甘夏や梅を送ったらそれをジャムにしたものをもらったり、そのお店のスイーツが届くこともあります。田舎にいながら都市とつながり直している感じですね。」と話す。田舎に来たらもう都会とは縁が切れてしまうと思っていたそうですが、最近ではそんなこともないと感じているそうです。「東京で仕事をしていた時は、都会の意識高い系の人たちは平日しっかり仕事をして、休日に菜園やサーフィンを楽しんでいるようなイメージでした。
でも、その逆もできると思うんですよね。ここで5日働いて都会で2日過ごすような田舎をメインにしつつ都市ともつながる暮らしがあってもいいと思うんです。」と、ここでは新しいライフスタイルができあがりつつあります。

夫婦力を合わせて、農家の暮らしを開発中

農業をしたい人の「研修制度」はじめました。

この4月からの新しい取り組みとして、藏光さんは『研修制度』をはじめました。

蔵光農園のサイトでは、研修制度や農家生活情報が充実

「今募集をはじめたところです。研修用の家はもう借りていて、何人か話をしている方もいるんですが、決断には時間がかかりそうですね。」と話されます。この研修制度は、地域から人が減っていく危機感からはじめたとのこと。「地域から人がいなくなると、例えば小学校や病院がなくなってしまうかもしれません。そうなる前に自分で考えて農業ができる人、それで独立できる人を増やしていけたらいいなと思っています。」。ここでは、2年間の研修期間で農業と販売という二本柱で人材を育てていくのが目標。

「古民家を活用して、研修用の家を準備しています。お気軽におこしくださ~い。」

「農家はそれぞれが経営者なので、どういうスタイルでするかを自分で決めることができるんです。ただ、農地を借りるのは人間関係をつくるところからはじまるので、この研修を通じてそのハードルを低くできればと考えています。」と藏光さん。和歌山県は地域的に温暖で豊かな場所、「食べるには困らないので安心して来てほしい。」というのは、地域全体の願いかもしれません。