久山秋星さん

大阪府→古座川町

大阪府箕面市生まれ。2017年5月に古座川町に移住してきました。フローリスト(花屋)として花を愛する久山さんはいま、無農薬で育てるのは難しいと言われているバラの栽培をしています。

「自然」と「不自然」のはざまで

久山さんは、古座川町三尾川で農業や再生可能エネルギー事業などを展開しようと活動している「Agarato(あがらと)」のフラワー事業を主に担当しています。Agaratoでは無農薬で化学肥料を使わない栽培にこだわり、ヨーロッパ野菜など認知度の低い野菜と、食べられるバラ「エディブルローズ」をつくっています。

おじいさんが岡山県で農家をしていて、幼いころから植物や山のことを教えてもらい、自然に親しんできました。「自然と触れ合っていることが自然で、都会で生活していると不自然な場所にいるような感覚になることが多かったです」と話します。

移住前は京都市の花屋に勤めていました。お客さんが花を贈る相手の喜ぶ顔を思い浮かべながら花束を作ることに誇りを持っていたと言います。しかし、毎朝市場に行って花を仕入れるのですが、農薬をかけられ、頭が切り揃えられ、花屋へ出荷されというように、花が物のように生産されていくことを不自然に感じていました。そういう時におじいさんとの記憶をたどると、農作物が不揃いでもキラキラしていたことが思い出され、「自然の中で生きることって何だろう」と疑問に思ったそうです。

移住のきっかけ、古座川町での生活

移住を考えるきっかけは“花屋で買った花を部屋に飾ると肌が荒れる”人がいることを知り、無農薬で花を育てようと考えたことでした。知人の紹介で古座川町を訪れ、Agaratoの代表の思いに共感しました。「花を育てることや野菜を育てること、人と自然がお互いに心地いいかたちで共存できる環境を、仲間たちとここでつくれると思ったんです」。

古座川町に来て変わったのは、規則正しい生活を送るようになったことだと言います。仕事はすることがたくさんあってハード。台風の季節には竹で作ったハウスが倒れたことも。しかし「今日は雨降るなとか、暖かくなったら草伸びてくるなとか、そんな近所の人との何気ない会話がすごく心地いいです。都会じゃなかなかないじゃないですか」とほほ笑みます。

年間を通じて、草刈りや田植えなど、地域の人の動きに合わせて取り組んでいます。2017年からは地域の秋祭りに出店、2018年には地域の人から田んぼ2反(約2千平方メートル)を借りて、米づくりの挑戦を始めました。「自分たちが無農薬でやっている分、『草ぼうぼうにしていると種が飛んできて困る』『だからよそ者は』と言われないように。今後移住してくる人たちのためにも自分たちがしっかりして、信頼してもらわないと」。


移住してからの1年を振り返って久山さんは、「地域の人の温かさを近くに感じます。受け入れてもらい、応援してもらっているように感じるんです。紀南にはせっかく自然が残っているので、人と自然が寄り添う地域になれば。そのためにAgaratoももっと頑張らないと」と意気込みます。

話を伺った日は、畑の雑草を抜いたり、バラについた虫を取り除いたりする作業をしていました。久山さんはバラを前にすると、野菜の時に比べて、より優しい顔つきになるのが印象的でした。

移住者の仲間とともに

この日は、2018年4月に入った横浜出身の苅部美乃里さんも農作業をしていました。苅部さんは以前、友人と旅行で古座川町を訪れ、カヌーや星空など自然を満喫して移住を決意。「犬や鳥の鳴き声が聞こえたり、水田に月や山が写っていたりする感じがきれいで。そういうことに幸せを感じることのできる毎日がすてき」と笑顔で話していました。

久山さんに古座川町や紀南のいいところを尋ねると「いい自然があって、いい人たちがいる」ところだと答えてくれました。いきいきと楽しそうに花や野菜に向き合い、自然との関係を考え、地域の人といい関係が築けているからこその言葉だと思いました。
■株式会社あがらと
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