荒井恵理さん

埼玉県→北山村

埼玉県出身の荒井恵理さん。大学在学中に参加したインターンシップがきっかけとなり、人口450人の北山村へ。平日は北山村役場職員として働くかたわらで、暮らしから生まれる観光“フットパスツアー”を企画しています。

新卒で北山村へ


高校の修学旅行で海外を訪れたことをきっかけに、「観光に関する仕事がしたい!」と思った荒井さん。観光学を専攻する大学3年生の夏、「全国の道の駅におけるインターンシップ」に参加。数ある受け入れ先の中でも「観光筏(いかだ)下り受付」というユニークな募集に惹かれ、北山村を選びました。観光筏下りとは、かつて山から切り出した木材を運んだ筏師の仕事を、観光向けに復活させたもの。人口が約400人だけの小さな村であることも、花粉症に効果があると言われる「じゃばら」の産地であることも知らなかった荒井さん。20日間のインターンシップが終わる頃には「北山村が“もう一つのお家”になっていた」と振り返ります。「魅せられたのは人でした。毎日自転車で、北山観光センターへ通いました。ペダルをこいでいると、軽トラックに乗った村人が話しかけてくれたり、『乗っていく?』と誘われたり(笑)。自宅での夕食に招いてくれた人もいたな」

「このご縁が途切れないようにしたかった」と話す荒井さんは、埼玉へ帰ってからも、繰り返し北山村を訪れます。じゃばらの里の収穫祭へ参加し、家族と北山川観光筏下りへ。卒業論文では、北山村の筏師をテーマに執筆しました。就職活動が始まると、一度は東京での就職を視野に入れるものの「北山村で暮らす方法はないかな」と思いを強める荒井さん。「北山村と繋がったら、もっと面白い未来を見られるんじゃないか。そう思ったんです」。とうとう大学4年生の11月に、北山村役場での職員募集を知ります。卒業後は北山村に住みたい気持ちそのままに、北山村役場で働くことに決めました。

北山村が好き


北山村役場での配属先は、総務課でした。会計係として、大の苦手という数字と格闘する一方、自ら北山村に関する活動を始めます。Facebookページ「北山村に恋した女たち」を運営し、北山村が好きで仕方のない仲間たちと「北山村の良いところを言う会」を開催。暮らし始めてみて、どうでしょうか。「埼玉に暮らして、『北山村いいな』と言っていた頃とは違う。いざ暮らし始めると、アラも見えちゃったりします。そんなときに、好きなところを話すことで北山村の面白さを再確認できて、ものすごく実りがある。やっぱり選んで来てよかったって。北山村は、勝手に第2の故郷だと思っているんです」。

暮らし目線の観光がしたい

夏場は北山村観光筏下りを求めて、観光客が入れ替わり立ち替わり訪れる北山村。ここで荒井さんは、あらたな観光をカタチにしようとしています。2019年3月に第1回目を開催した「春のきたやま フットパスツアー」。この企画は、暮らし目線の観光とも言えるよう。「村内下尾井の集落をみんなで歩きました。北山村には、天窓代わりにガラスの瓦が使われている家があるんです。上から眺めるとそれが美しくて。参加者のみなさんには、各々のペースで歩いてもらい、北山村の雰囲気、匂い、音を自分なりに感じてもらえるよう、心がけました」。自身も南紀熊野ジオパークガイドの資格を持つ荒井さん。ガイド仲間と話す中で、フットパスツアーのアイデアが浮かんできたといいます。そこで公民館へ講師を招き、みんなでツアーをつくっていきました。

このインタビューの日、荒井さんに北山村を案内してもらいながら、「一番の観光資源は人なのかもしれない」と思いました。そして別れ際、荒井さんはこう口にしました。「1度きりでなく、2度、3度と来たくなる北山村へ。私自身が人に惹かれて北山村へ来たように、何回も来たいと思わせるのは、制度よりも人なのかな。『あらいちゃんに会いたくて来たよ』。いつかそう言われるような、会いに来てもらえるような人間になりたいな」

・屋号:北山村役場
・所在地:和歌山県東牟婁郡北山村大沼42
・TEL:0735-49-2331
・HP:https://www.vill.kitayama.wakayama.jp/