本舘 千子(もとだて かづこ)さん

東京都→那智勝浦町

和歌山県の港町、那智勝浦町出身。三重県立看護短期大学の助産学専攻。22歳のころに一回目のUターンをし、実家近くの病院で7年間ほど勤務。その後、東京の助産院で経験を積んで再度Uターン。現在は、開業助産師や看護学校の講師として、産前産後のお母さんのサポートや次世代の育成をおこなうほか、オンライン子育て女子会といった新しい取り組みも始めている。

地域の親子に寄り添う

那智勝浦町にたった一軒しかない、分娩取扱いを行う助産院の開業助産師・本舘千子さん。助産院とは、妊産婦さんの出産や、産前産後の手助けをする場所です。病院のような医療行為ができないといった制限がある一方、「産む体勢を自分で選ぶことができる」「家族の立ち合いが可能」など、より自由で自然に近い出産ができるのが特徴です。

1998年に開業して、今年で22年。本舘さんの元にはこれまで、串本町、熊野市、本宮町、北山村と、幅広い地域から多くの妊産婦さんやそのご家族が訪れました。初めての出産に不安を抱えているお母さんも、本舘さんの顔を見ると安心するといいます。

地域のお母さんたちの勉強会「Mam’s school」の様子

学びは外で、暮らしは地元で

自営業をしていた母親に言われた「手に職を持っておくといい」という言葉が、本舘さんを助産師へと導いた最初のきっかけでした。本舘さんはまず、助産師ではなく看護師を目指して三重県の看護短大に入学。そこでの実習などを通して、徐々に助産師の仕事へと興味を持ち、助産科に進学しました。

卒業後は地元の病院で約7年間勤務。その後、お産についてもっと勉強したいという思いから東京の助産院へ向かいました。当時は、再び地元に帰ってくるつもりはなかったといいます。東京での仕事は充実していましたが、人口の多い東京での暮らしが本舘さんにはあまり合いませんでした。

「電車の中で3回くらい倒れたん。人いっぱいのなかで、もう住んでられんなと思って。やっぱり海があって、川があって、のんびりしたとこが自分は好きなんやなと思って帰って来ました」。

南紀勝浦の日差しが降り注ぐかづこ助産院

那智勝浦町で助産院開業!

ご自身で助産院を開業しようと決めて、二度目のUターンをしたのが1998年。しかし、地元とはいえ、すぐに仕事があるわけではありません。初めは不安もあったといいます。

ちょうどそのころ、地元の役場では、産後のお母さんと赤ちゃんを訪問するという事業が行われていました。担い手不足を知った本舘さんは、その事業を手伝うことに。仕事を通して近隣の市町村を回ったことで、少しずつ地域の人との繋がりができていきました。

「一人でやろうと思っても無理やから、いろんな人との繋がりが大事やね」と本舘さん。その後、結婚と出産を経験し、助産院の仕事を本格的に始めることとなりました。

子供たちへの思いから生まれた、様々な取り組み

現在、本舘さんはこれまで培ってきた技術と知識を活かして、様々な活動をおこなっています。たとえば、地域の5カ所で毎月1回ずつ開催されている「ベビーマッサージ」。赤ちゃんのマッサージを20分ほどレクチャーしたあと、産後の相談を受けたり、母親同士で悩みを共有したりするなど、お母さんたちの交流の場となっています。

ほかにも、毎月1回、子育てに関わる様々な分野から講師を招いておこなう「Mam’s school」。PCを使って遠隔でお母さんたちを繋ぐ「オンライン子育て女子会(仮)」。性に関しての正しい知識を伝える「性の学び」など、親や赤ちゃんのサポートから次世代の育成まで、広く力を入れています。

通常の助産院の仕事以外に、本舘さんがこれほど積極的に活動するのはなぜでしょうか?

「もう50歳も過ぎているし、私ができるのはこれからの人を育てていくっていうことかな、と思って。学びの場をどんどんつくって、教育をちょっと頑張りたいなと思っています。

究極的には、児童虐待が起きないようにしたい。性に関する基本的な知識だけじゃなくて、私たちがどのように生まれてきたかというところから、どのように育っていくか。いま生きてる自分たちが、どういうことを次の世代に残していかなあかんかを伝えていきたい。性の学びの『せい』は『生』でもあります。

これからの時代、人との繋がりがもっと大事になってくると思う。私らだけが良ければっていう考えでは、まち全体も廃れていくし、何をやるにも私だけ頑張るじゃなくて、みんなと頑張るっていうように変えていった方が、より進んでいくんじゃないかなと思います。大きく言えば、世の中が生きやすくなってほしいな」。

新しい命が生まれるお産のための部屋

田舎での生活には、繋がりが大事

最後に、これから移住を考えている人へのメッセージを伺いました。

「勝浦は住みやすくて本当に良いところやと思うけど、生活していくのにお金は大事。お金がなかったらその人にとって辛い場所になってしまう。農業や漁業、病院の看護師さん、手に職を付けれるんやったら病院も来てほしいやろうし、役場のお手伝いとかもできると思う。

あとは、いろんな人と繋がっておけば次の仕事も見えてくる。田舎の方が人と繋がりやすいし、一回誰かと繋がればその先も繋がっていく。本当はしたくなかったことでも、やってみればそこからすごい出会いがあるかもわからんし。工夫次第で広がっていくと思います。ぜひ、勝浦に来てください。(笑)」

 

かづこ助産院
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町北浜1-13
E-mail:sanba-kazuko@nifty.com
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